高齢者の免許

先日、70歳過ぎの先輩から、「現在法改正が検討されているが、もうNSXには乗れなくなるのだろうか?」と慌てて連絡して来た。 NSXが登場して30年になると当然ドライバーも高齢化してくるが、 私はまだその年齢域には達していないし、正直のところよく理解できていなかった。少し調べてから彼に伝えたら、とても喜んでくれた。

結論としては、 衝突被害軽減ブレーキなどを搭載した サポカーのみが運転できる「サポカー限定免許」の取得は任意であり、義務付けられるわけではないので、これまでの免許でこれまで通りマニュアル車に載り続けることはできる。ただ、対象年齢を75歳にするか、80歳なのか議論のあるところだが、 事故歴や特定の違反歴があるか加味され免許更新時に実車を使っての運転技能試験があり、これにパスしなくてはならなくなる。 合格しなくても再受験が可能で、教官が横に乗って指導までしてくれるそうだ。

サポカーの安全性能もまだ完全ではないようで、よくニュースになるブレーキとアクセルの踏み間違いを防止する装置も、通常速度で走っている時には作動せず、発進時と低速走行時のみだそうだ。だが、地域によっては高齢でも自身が運転しなくては生活していけない人がいるのも事実で、日本の技術によって、そう遠くない時期に確立されることを信じている。同時に都市においては、公共交通機関利用を促す施策にも期待したい。

警察庁は2020年の通常国会に道路交通法の改正案を提出する方針で、改正後、2年をめどに施行される見通しとのこと。その頃、私を含め、周りの仲間たちはNSXをどんな風に楽しんでいるのだろうか。

研究所統合のこと

先日「ホンダ四輪も本社で開発へ、子会社・技術研から統合」との記事が掲載された(朝日新聞、2020年2月17日)。驚いた。当時の本田宗一郎さんが技術研究所を 作ったのだと思っていたのだが、ある方のお話では、藤澤専務が宗一郎さんの居場所がないので研究所を作り、そこで好きなようにやらせるためだったとか。当時、研究所を別組織にするのは一般的ではなく、そうすることが 技術力向上には不可欠と説いたと記憶している。その後、数々の新しい技術を実用化し 市販車に取り入れられ進歩してきたのは周知のこと。

海外の知人に「Bad news」とメールしたら、「Why?」との返事。今回の統合は、二輪で実績をあげたから四輪でもということなのか。効率的に、スピーディーに仕事を進める上ではいい組織かも知れない。軽はトップクラスの販売実績をあげ続けているが、 会社の業績は悪い。大英断と言うべきか何だか、加速度的にらしさを失うホンダは どうなるのだろう。

NC1のこと

New Sports car eXperimental

Xとは何だったのか?


NSXが登場した時、New sports car experimentalという言葉を知り、NSXに込められた意味をよく理解していた。X、すなわち未知数を、果たして如何に進化し発展させて行くのか、大変関心を持って乗り続けた。幸いにも、新しい改良が加えられる度に「試乗会」と称して、サーキットや研究所のテストコースの一部などを利用して乗る機会を得た。その度に、外観は変わっていないのに、その走りは明らかに進化していることを感じ、常に新鮮であった。

Type-R、Type-T、C32Bエンジン、Type-S、Type-S Zero、Type-R(02)どれも登場する度に進化を感じる瞬間だった。このことがオーナーとして喜びでもあった。ホンダらしさを感じた。そして、NSXはNC1で大きな変化を見せてくれた。それは「別物」という言葉で表現するオーナーもいるほどであった。その変化の中身は有り余るほど多い。まずハイブリッド化、そしてツインターボ搭載縦置きエンジン、 アルミから新素材へ、 AT化、 SPORT HYBRID SH-AWD ・・・。Xの意味を理解しているつもりの私でも、あまりの変わりように戸惑いとも言えるほどの驚きであった。

さて、ドライブしてどう感じたのか? 実はこれまで進化した時とは異なり、これほどの大きな進化を遂げたにも関わらず、NA1オーナーに対して試乗の機会を与えられるのはかなり時間が過ぎてからのことだった。それ以前に、新型が出る、出ると言いながら延期、延期で、市販車を目にするまで如何に時間、いや年数が経過したことか。ま、それはさておき、まずやはり大きい。いや、大き過ぎる。サイズについては仲間と話していても結構個人差があるようで、ある人は「そうでもない、いいくらい」と言う。ただ、実際に自宅の駐車場や街の一時預かりのスペースを考えると現実的なサイズとは言えない。それよりも、自身が運転席に乗って街を走っている時、やはり大きいとの感覚が常にある。街乗りでは十分過ぎるパワー、よく効くブレーキのおかけで追い越しもラクラク。ただ、街乗りでそれほどまでのパワーが必要なのか? あいにくサーキットをそれなりのスピードで走った経験はないが、必要だと思わせるのだろうか。

そして重い。クリアしなければならない安全基準があったとしても、1800Kgである。C30AエンジンのNA1は1350Kgである。その後のType-Rは1230Kgで、最終モデルと言ってもいいC32Bエンジンを搭載したあのType-R(02)に至っても1270Kgと軽量である。10年以上を経て、この車はより高い性能を得たが重量は変わらない。これこそが進化だと思う。このことはオーナーがこの車から長きに渡り離れることができなかった大きな理由のひとつであろう。なぜこんなにも重い車ができたのか、いやなぜこんなにも軽い車を作ることができたのか? それは、日本国内にあった280馬力規制のおかげだと強く信じている。限られた条件の中でいかに運動性能を上げるかを必死に考えた成果なのだろう。

いまひとつは価格。高過ぎると思う。以前、NA1を発売して数年後のホンダ社内での会議で価格について「もっと高くても良かったのでは?」との話題になった時、当時の開発責任者であった上原は「良かったと思っている。高額だけど、欲しいと思ったらサラリーマンでも買える価格だったから、この販売実績になっている」と話されたとか。ポルシェやフェラーリよりNA1が欲しいと思って買った人は多いと思うが、ランボルギーニを止めてNC1を注文した人はどのくらいいるのだろう。

本田技研工業株式会社のNSXのページ