【提出】NSX純正タイヤ需要予測

ホンダが純正タイヤの使用を推奨しているNSXですが、現状ではRE070を除いては常に在庫がない状態です。需要予測に基づく計画生産ができれば供給は改善され、納期待ちするオーナーが減るとして調査依頼を受けておりましたが、多くのクラブ組織代表者、コミュニティーリーダー等の個人、整備会社、中古車販売会社などから数多くの情報、ご意見を得てこのほど取りまとめ、依頼元に提出しました。今後、精度を高める必要があります。多くの皆さまからの情報・ご意見をお待ちしています。

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NSX純正タイヤ需要予測

NSX Owners.com事務局

富吉啓文(2021.7.12.)

ご依頼いただいておりました表題の件につき報告します。今回の調査にあたっては予想を上回る件数の回答およびご意見をいただきました。ただ、現存するNSX車両全体からすれば、1割にも満たないサンプル数からの考察であるため、精度が低いことは認識しています。また、推測値は提供いただいたデータの集計とはいえ、あくまでも私の主観によるものです。

【調査対象】NSX CLUB of JAPAN、NSXオーナーズクラブYOKOHAMA、NSXオーナーズクラブつくば、NSXオーナーズクラブもてぎ、NSXオーナーズ倶楽部・京葉、NSX-TC、NSXクラブ愛知、NSXクラブ九州、コミュニティーリーダーおよびNSX仲間の多い個人9名、NSXディーラー複数、中古車販売店複数、整備店、NSXオーナーズミーティング鈴鹿参加者。(順不同。すべてから回答を得られたわけではありません)

【用語】指定タイヤ(以下、OEタイヤ)、指定外タイヤ(以下、指定外タイヤ)

今回の調査でわかったこと

  1. OEタイヤを装着しない理由は、「無かったから」です。
  2. OEタイヤの装着率は20~30%と推定します。
  3. 現在の年間走行距離は約3,000~5,000Kmだと思います。
  4. サーキット走行より一般道走行ユーザーが多いと思います。

以下、説明します。最後に簡単な試算と、「ファクト」と「今後」について記述しています。

  1. OEタイヤを装着しない理由は、「無かったから」です。

タイヤの性能もNSX全体の性能の一部を担っていて、そのことはオーナーには理解されていると思います。ただ、中古車を手にされた新しいオーナーの方がどこまで理解されているかは未知です。NSXが本当に好きで、欲しくて色々調べた方はご存じかも知れませんが、そうでない方はOEタイヤがあること自体を知らない、あるいは買った時に付いていた指定外タイヤのままとか、自分の好きなタイヤを選択されるのでしょう。

新車を購入し乗り続けているワンオーナーの方はよく理解されていて、交換のタイミングが来たら「OEタイヤを」とディーラーで整備と併せて指定されている方は多い(多かった)ようです。ところが、メインとも言っていい16/17インチのRE010の「在庫がない」、あるいは「次の入荷はわからない」との返事が来たら、そんなに待てませんから指定外タイヤを注文してしまいます。次の交換のタイミングでもまた同じことが起きます。もしこの時に有れば、「OEタイヤを使い続けたい」と思っていますので、戻ると思います。

今回の調査依頼のポイントは、正にここです。指定外タイヤのオーナーが、今後供給が改善されたからといって、OEタイヤに戻ってくるかについてはわかりません。ゼロではないと思いますが。価格のことを言われた方も複数ありました。「性能のいいタイヤがOEタイヤよりも安く買える、しかも長持ちする」。そんな声も多かったです。

  1. OEタイヤの装着率は20~25%と推定します。

若干の差はありますが、組織の代表者に聞いた全体としての割合、またあるグループの集まりでの実態からOEタイヤ全体の装着率は20~25%あるいはそれ以下かな、と思っています。これはタイプにより大きく異なります。台数も多くメインであるRE010の供給がなく指定外タイヤを装着しているため、全体の比率が低くなっていますが、RE070の装着率は結構高いと思われます。16/17インチから17/17インチに変えているオーナーも散見されます。逆に、15/16インチのA022なんかは非常に少ないですが、「根強い」ファンがいるようです。「15/16インチは全体で約10%、A022は約3%」とのフィエスタでの観察報告が寄せられています。

一方で、OEタイヤを装着して納車している中古車販売店もあります。更に年数が経過しクラシックの領域に入るとオリジナル15/16インチのOEタイヤの需要が高まるかも(必須?)、との意見も複数ありました(販売数は望めませんが)。既に今でもあるようです。

鈴鹿でのある回のオーナーズミーティングでは、15台中OEタイヤ装着車は3台でした(今回対象にしていないNC1も指定外タイヤでした)。サーキット走行では、Sタイヤを選択するオーナーもいて、装着率は更に低くなります。ただ、NSXの「使われ方」で見れば、圧倒的に一般道・高速道での走行を主とするオーナーが多いと思います(4.を参照)。

  1. 現在の年間走行距離は約3,000~5,000Kmだと思います。

1990年の発売当時から数年に購入されたオーナーは、約30年間乗り続けています。この方たちの多くは60~70歳代です。私を含め、この年代の方の車はほとんどが100,000Kmを越えています。単純に100,000Kmを30年で割ると、約3,300Kmです。この年代の方々は、「体力的にも、もう長距離は乗れない」と言われる方も多いです。NSX以外の車を運転する比率も高まっているでしょう。クラブ・オブ・ジャパンでは毎年、累計走行距離の報告を求めています。それによる全世代の直近の有効回答61台の平均では、約3,000Kmでした。また、あるグループでのアンケートでは、年間走行距離が0~3,600Km(月300キロ走行)が70%、3,600~6,000Km(月500キロ走行)が30%でした。新たにオーナーになられた年齢の若いオーナーの走行距離はこれよりも長いでしょう。以上から、平均的な年間走行距離は3,000~5,000Kmと推測します。

  1. サーキット走行より一般道走行ユーザーが多いと思います。

少し古い話になりますが、以前上原さんから、「6,000台が残存している」と伺いました。先にも触れましたが、常連の参加者が多いという事実のオーナーズミーティングからもわかるように、多くのオーナーは一般道での走行がほとんどだと思います。オーナーズミーティングでは最新ではRE71RSやSタイヤも見られますが、これはタイムを縮めるためであり、全体では一般オーナーはそこまでの性能を求めていない、と考えています。今回の調査でも、「サーキット走行は指定外タイヤ、一般道はOEタイヤ」と使い分けているオーナーも複数おられました。1.に書きましたように、OEタイヤを求めるオーナーは多くいると思います。

【試算】

年間走行距離とOEタイヤ装着率の推定値を出したので、この数字を基に簡単な計算式に入れて需要予測値を出してみました。前提は以下です。

「年間走行距離3,000Km、前輪寿命15,000Km、後輪寿命8,000Km、国内残存台数6,000台、OEタイヤ装着率25%。」

結果:前輪643本、後輪1,125本

【ファクト】

  • 私がメインテナンスをお願いしているホンダカーズ(全店)での管理台数は79台ですが、内50台は既存客ではありません(中古車オーナー)。OEタイヤを装着しているのは私と私の友人の2台だけでした。販売台数は181台(NC1除く)だったそうです。
  • ADVANを注文する際に、車検証の呈示を求められたと複数のオーナーから報告ありました。POTENZAではこのような報告はありません。
  • ディーラーでは各県の部品供給会社にタイヤ在庫を確認し、無いときには他県の部品供給会社にまでは問い合わせず、顧客に「在庫なし」の回答をしています。
  • 現在製造されるOEタイヤは、発売当時と同じコンパウンドを使っているのかについて関心を示される方が複数おられました。長期間在庫されていることを気にされる方がおられました。RE070の性能のバラつきの報告もありました。
  • 一般的に、30年経過すればタイヤ性能は格段に向上していると私は思っています。
  • タイヤとは関係ありませんが、ディーラーでの整備能力や知識が乏しく、安心して任せられない、とディーラーから離れるオーナーもいます。このため、タイヤに関しても来客データだけでは把握できないと思っています。
  • 他の保安部品でさえ入手困難で走れない状態なのにOEタイヤのことを言われても、と改善を訴える声が複数ありました。

【今後】

  • さすがに、今回は銘柄ごと、商品番号ごとの需要予測まではできず、全体としての推測に留まりました。これでは実際の生産はできませんから、次のステップとしてはアプローチを精査するとともに、これをより詳しく調査する必要があると思っています。
  • 中古車販売の際に、OEタイヤの説明が必要ではないかと感じました。一歩進めて、OEタイヤを装着して納車してもらう体制も必要かも知れません。
  • 一か所で集中管理はできないか?(やるなら私個人としては二か所を薦めますが)私はよく知りませんが、「〇〇タイヤ」(例)などを提案する方がおられました。
  • タイヤの流通に関する新たな運用については、オーナーおよびディーラー、タイヤショップ、中古車販売店を含めた情報共有が不可欠です。今回の調査により、NSX Owners.com参画メンバーがこの部分で一定の役割を果たすことができることがわかりました。

以上